このウェブページには広告が含まれています。

FX で損した話

お金

これは、私が過去に FX に手を出して失敗したときの体験談です。

10年以上前の話なので、少し記憶があやふやな部分があります。また、説明を簡単にするために、実際とは異なる数字を示している部分があります。

私が投資を始めたのはリーマンショックの少し前でした。ですので、現在の投資歴は20年弱といったところです。リーマンショックの直後は、なかなか株価も上がらず、株式投資の利益もあまり出ない年が続いていました。

いまから10年と少し前くらいになって、株式投資の利益が出はじめました。仕事のほうでも、研究者としてはかなり給料のいい職にありつくことができて、資産が増えるようになってきました。

そこで、投資対象の幅を広げてみようと思い、FX(外国為替証拠金取引)に手を出したのです。

FX 取引を始めるには、まず、FX 会社を選んで口座を作らなければなりません。私が選んだのは、FX の業界では名の通った会社でした。レバレッジの倍率などは他の業者より低めでしたが、信用がありそうだったので、突然、倒産するようなことはないだろう、と思ったのです。

その会社を選んだのには、もうひとつ、理由がありました。その会社はアルゴリズムを使った自動取引のサービスを提供していたのです。

とは言っても、10年以上前の話ですから、現在のような AI を使った高度なものではありません。よく、為替レートのチャートを見て、この形が出たら売り、などというテクニカル分析があるのですが、それを自動でやってくれる、といった感じのサービスです。どのような条件で売買するのかによって、20~30 種類くらいのアルゴリズムが提供されていました。

私には研究者としての本業もあるので、仕事中に取引をする訳にはいきません。そのため、この自動取引のサービスが魅力的に思えたのです。

とにかく、そうして選んだ FX 会社に口座を作り、手始めに 200万円 を預入しました。

しかし、口座を作ってみての第一印象の時点で、なんとなく変だな、という違和感がありました。

例えば、株式投資の場合は、証券会社がいろいろな分析ツールを用意してくれています。投資先の企業を株価収益率でフィルタリングしたり、株価のチャートに移動平均線を引いたり、といったことができます。ところが、この FX 会社では、各アルゴリズムのチャートについての分析などは何もできないのです。

大切なお金を扱う会社のサービスとしては、なんだかショボいな、という印象でした。

しかし、日本企業だけでも何千もある株式と違って、通貨の種類は数十程度です。複雑さが違います。こんなもんなのかな、と思って取引を始めました。

初めのうちは、アルゴリズムのランキングで、成績の良いものを選んで自動取引をしていました。その結果としては、勝ったり負けたりしながら、少しずつ資産が減っていく、という感じでした。

しかし、これは想定の範囲内でした。過去に成績の良かったアルゴリズムが、これからもよい成績を出すとは限りません。それに、私はあのリーマンショックを経験しているのです。投資ですぐによい結果が出る、などとは思っていませんでした。

それでも、取引を始めて3か月くらい経ったころ、方針を見直しました。過去に成績の良かったアルゴリズムではなく、利益が小さくても、あまり損失の出ないアルゴリズムがないか、と考えるようになったのです。

そのなかで、ユーロと英ポンドの通貨ペアの取引を行うアルゴリズムに目を付けました。他のアルゴリズムよりも取引の間隔が短い、つまり、1か月あたりの取引回数が多いアルゴリズムでした。過去のチャートを見ると、資産の増え方は遅いものの、ほぼ右肩上がりでした。

チャートのイメージ
これは乱数で作った偽物のチャートなのですが、雰囲気としてはこんな感じでした。
資産の減る期間があまりないように見えたのです。

私は、このアルゴリズムなら問題ないだろう、と考えて取引を始めました。しかも、堅実に資産が増えるだろう、と考えたので、短期間でアルゴリズムを変えたりせず、このアルゴリズムひとつだけで取引をして、しばらく様子を見ていたのです。

ところが、予想に反して、それまでよりも速いペースで資産が減っていくのです。アルゴリズムのチャートを確認すると、相変わらず右肩上がりで、私が取引を行っていた期間も資産は増えていなければならないはずです。

何かがおかしい

ここに至って、私はチャートと実際の資産額の動きの違いを真剣に分析し始めました。何せ私の本業は科学者です。いろいろな数字について、ひとつひとつ検討しました。

そして気付いたのです。取引には手数料がかかる、という、当然すぎる事実に。

FX 会社もボランティアではないので、どこかで顧客から手数料を取らなければなりません。FX 会社は通貨の売りと買いの為替レートに差を付けることで、この手数料を得ています。

例えば、1米ドル が 100円(1 USD = 100 JPY)だったとします。顧客がドルを買うときも売るときも同じレートでは FX 会社は儲かりません。そこで顧客がドルを買うときは 1 USD ← 101 JPY とレートを高くし、売るときは 1 USD → 99 JPY と安くします。この差額の2円はスプレッドと呼ばれていて、FX 会社はこれで儲けているのです。

実際の FX 取引のスプレッドは、1通貨単位で2円、などといった高額ではなく、例えば、米ドルと日本円の通貨ペアでは 0.2銭 といった額です。1米ドル が 100円 であれば、10万分の2、ということになります。これは一見、とても小さい数に見えるのですが、FX 取引ではレバレッジというものがあり、さらに、何度も取引を行った場合、かなりのコストになります。

FX 会社の「売り」のひとつが、口座にある資金を担保として借金をすることで、自己資金の何倍もの資金を動かすことができるサービスです。この、自己資金に対して何倍の資金を動かすことができるか、を表すのがレバレッジです。

例えば、口座に 200万円 を預けている場合、5倍 のレバレッジをかけると 1000万円 の取引を行うことができます。米ドルを買って売る1往復の取引を行った場合、1000万円 の 10万分の2 にあたる 200円 の手数料がかかることになります。

私の取引の場合は、ユーロと英ポンドの間の取引であったため、まず、日本円からの両替に手数料がかかっていたと思われます。さらに、私が使っていたアルゴリズム取引のサービスは別の企業が提供したもので、口座を作った FX 会社は窓口になっていただけだった、という事情がありました。FX 会社はこの企業に手数料を支払う必要があったはずです。

これらのために、自動取引のスプレッドは通常よりも高くなっていたのです。

例えば、上で見た 200万円 に 5倍 のレバレッジをかけた取引で、スプレッドが 1万分の2 だった場合、1往復で 2,000円 の手数料がかかることになります。

私は単純に、自動取引が行った取引の回数とスプレッドによる手数料を掛け算してみました。するとそれだけで、計算上増えているはずの資産の額と、実際には損失が出ている資産の額の差が、ほぼ説明できてしまったのです。

私が使ったアルゴリズムは1か月あたりの取引回数が多いものでした。例えば、1日に1回、2日で1往復の取引を行っていた場合、1か月で 2,000円 × 30日 ÷ 2 = 3万円 もの手数料がかかることになります。これを1年も続ければ、200万円 の資金から 36万円 の手数料を支払うことになり、これだけで元手の2割弱が消えてなくなるのです。

アルゴリズムのチャートでは資産が増えていることになっていたのですが、このチャートは、スプレッドを考慮していない理論値を示したものだったのです。詐欺みたいな話ですが、スプレッドを決めるのは窓口の FX 会社で、アルゴリズムとチャートを提供している企業には、それを考慮できない、という事情があったようです。

結局、私は 40万円 程度の損失を出して FX から撤退しました。この 40万円 の損失のほとんどは、為替レートの変動によるものではなく、FX 会社に手数料として献上したものだと考えています。

このとき、私は確かに金銭的には損をしたのですが、実際に FX 取引を経験することで、投資投機 について考える機会を得ました。私は今では、FX は投資ではなく、投機だと思っています。

時間をかけて成長するものを保有するのが投資で、短時間のランダムな現象にお金を賭ける、つまり、ギャンブルが投機。私は大雑把にはそのように考えています。そして、ギャンブルでいちばん儲けるのは胴元なのです。

ただし、FX では、通貨を短期間で売買するのではなく、長期間保有することで利益を上げる手法を使うこともできます。そのため必ずしも、FX = ギャンブル とは言い切れない部分もなくはないのですが。